孔子を始祖とする思考・信仰の体系である儒教の教えをまとめた経書の中で特に重要とされる「四書」と「五経」の総称を「四書五経」と言う。
四書は「論語」「大学」「中庸」「孟子」、五経は「易経」「書経」「詩経」「礼記」「春秋」をさす。
その中の「礼記」は主に秦以前の礼儀作法について述べられ、あわせて孔子とその弟子との問答をまとめたもの。
九万字に及ぶ著書は修身や礼儀作法について述べているが、内容は幅広く政治、法律、道徳、哲学、歴史、祭祀、文芸、日常生活、暦法など多方面に及ぶ。
「礼記」に収められた一篇の「儒行」の中に孔子と弟子の問答があり、その一節に「儒有席上之珍以待聘」とある。 この一節は孔子が弟子の質問に答えたもので、「儒者は宴席の佳肴の如きで、良き人品と道徳を備えて招聘登用されるのを待つものだ」という意味。
そこから「席珍待聘」と言う四字熟語が生まれ、「才能ある者が登用され招聘任命されるのを待つ」という意味に使われるようになった。
「席珍」とは宴席に供される佳肴をさし、転じて「才能のある者」を言う。「待聘」とは「登用されるのを待つ」の意となる。
「席珍待聘」の四字成語から、聘珍樓の屋号はこの書物の一節にちなむ命名であった。
この一節でも佳肴を意味する「珍」を「才能ある者」の「珍」としてたとえてある様に、「聘珍樓」も「良き人、素晴らしき人が集り来る館」と解して佳肴と人を総じて語ってある。
《儒行》 魯哀公問於孔子曰:「夫子之服,其儒服與?」孔子對曰:「丘少居魯,衣逢掖之衣,長居宋,冠章甫之冠。丘聞之也:君子之學也博,其服也鄉;丘不知儒服。」
哀公曰:「敢問儒行。」孔子對曰:「遽數之不能終其物,悉數之乃留,更仆未可終也。」哀公命席。 孔子侍曰:「儒有席上之珍以待聘,夙夜強學以待問,懷忠信以待舉,力行以待取,其自立有如此者。」 儒有衣冠中,動作慎,其大讓如慢,小讓如偽,大則如威,小則如愧,其難進而易退也,粥粥若無能也。其容貌有如此者。 儒有居處齊難,其坐起恭敬,言必先信,行必中正,道涂不爭險易之利,冬夏不爭陰陽之和,愛其死以有待也,養其身以有為也。其備豫有如此者。
儒有不寶金玉,而忠信以為寶;不祈土地,立義以為土地;不祈多積,多文以為富。難得而易祿也,易祿而難畜也,非時不見,不亦難得乎?非義不合,不亦難畜乎?先勞而後祿,不亦易祿乎?其近人有如此者。
儒有委之以貨財,淹之以樂好,見利不虧其義;劫之以眾,沮之以兵,見死不更其守;鷙蟲攫搏不程勇者,引重鼎不程其力;往者不悔,來者不豫;過言不再,流言不極;不斷其威,不習其謀。其特立有如此者。 儒有可親而不可劫也;可近而不可迫也;可殺而不可辱也。其居處不淫,其飲食不溽;其過失可微辨而不可面數也。其剛毅有如此者。 儒有忠信以為甲胄,禮義以為干櫓;戴仁而行,抱義而處,雖有暴政,不更其所。其自立有如此者。 儒有一畝之宮,環堵之室,篳門圭窬,蓬戶甕牖;易衣而出,并日而食,上答之不敢以疑,上不答不敢以諂。其仕有如此者。 儒有今人與居,古人與稽;今世行之,後世以為楷;適弗逢世,上弗援,下弗推,讒諂之民有比黨而危之者,身可危也,而志不可奪也,雖危起居,竟信其志,猶將不忘百姓之病也。其憂思有如此者。
儒有博學而不窮,篤行而不倦;幽居而不淫,上通而不困;禮之以和為貴,忠信之美,優游之法,舉賢而容眾,毀方而瓦合。其寬裕有如此者。
儒有內稱不辟親,外舉不辟怨,程功積事,推賢而進達之,不望其報;君得其志,茍利國家,不求富貴。其舉賢援能有如此者。
儒有聞善以相告也,見善以相示也;爵位相先也,患難相死也;久相待也,遠相致也。其任舉有如此者。
儒有澡身而浴德,陳言而伏,靜而正之,上弗知也;粗而翹之,又不急為也;不臨深而為高,不加少而為多;世治不輕,世亂不沮;同弗與,異弗非也。其特立獨行有如此者。 儒有上不臣天子,下不事諸侯;慎靜而尚寬,強毅以與人,博學以知服;近文章砥厲廉隅;雖分國如錙銖,不臣不仕。其規為有如此者。 儒有合志同方,營道同術;并立則樂,相下不厭;久不相見,聞流言不信;其行本方立義,同而進,不同而退。其交友有如此者。 溫良者,仁之本也;敬慎者,仁之地也;寬裕者,仁之作也;孫接者,仁之能也;禮節者,仁之貌也;言談者,仁之文也;歌樂者,仁之和也;分散者,仁之施也;儒皆兼此而有之,猶且不敢言仁也。其尊讓有如此者。
儒有不隕獲於貧賤,不充詘於富貴,不慁君王,不累長上,不閔有司,故曰儒。今眾人之命儒也妄,常以儒相詬病。」
孔子至舍,哀公館之,聞此言也,言加信,行加義:「終沒吾世,不敢以儒為戲。」